「…田島、お疲れ。」

鈴木がベンチで天井を扇ぐように見上げる田島に握手の手を差し出す。

「疲れてないよ全然。全国で戦う体力残してあったから。」
握手に答えながらもそんな捨て台詞を吐いた。

「それはアジア大会で使うといいわ。私は代わりに白石と一緒に全国の舞台で暴れてくるわね。」
「初戦敗退だよ。きっと。」

「それでも幸せだわ。今死んでも悔いないかもしれない。」
本当に幸せそうな満たされた顔で涙溢しながら微笑む鈴木を見て、

「…マイクと付き合うのとどっちが幸せ?」

思いもよらない質問に驚くも、
「こっちよ。もちろん。」
にこっと微笑むと、
「嫌な女。」
と冷たく言い放ち睨むと、
「クスクス」と鈴木は笑った。

「…ま、それを聞いたら安心した。」
鼻で笑ってため息のような深呼吸をついて、顔をあげ、

「お疲れ。沙穂。ありがとう。」

「こちらこそありがとう。」

どこか清々しく、全てを駆けて戦ってきた田島の高校三年間の幕を閉じた。