「鈴木さん達を全国へ行かせねぇと戻ってきた意味ねぇからな…。」
田島のディフェンスを前に額から止めどなくこぼれおちる汗を拭いながら言った、その思いのこもった言葉がコートの上の三年の鈴木と新垣の耳に届いた。
(そう…白石が来るまで、東京ナンバーワンなんて、二、三年は目指したことなどない。
もちろん全国なんて夢の夢の話だった。
この舞台に立っている今も夢なのかもしれない。ここに立てているだけで不釣り合いなのかもしれない。)
聞いていた前原はそうーー思った。
鈴木さん達の一つ前の代まで明徳は一年いびりがあった。
それを止めてくれたのも、仲介してくれたのも鈴木さんだった。
私達二年は、鈴木達には感謝しかない。
“前原がキャプテンになったらきっともっといいチームになるわ。
だから、白石を宜しくね。”
引退した直後、一、二年の亀裂をよそに私にキャプテンの座を託してくれた。
チームを。
明徳の未来を。
信じて。
(まだ何一つ恩返ししていない…!)
緩急つけたドリブルの一瞬の隙をつき前原は未茉にパスを送ると、瞬時にジャンプシュートを決める。
「「!!」」
練習ではよく見ていた連携だったがあまりの一瞬のプレーに皆、目を疑った。
「やっ…た…」
「決まったぁぁぁあああ!!!」
「「きゃぁあああああ!!!」」
明徳ベンチは思わずジャンプして立ち上がり支え合うように抱き合う。
「おしっ!!」
野村監督と新米斎藤の二人も大きくガッツポーズをした。