ホテルから一番近いコンビニまで二分間の道のりですら、どこをどう歩いたのか地面を踏んでる感覚すら未茉にはなかった。
コンビニの扉が開くとひんやりとした空調の冷気が肌に感じると、明るい店内の光に立ちくらみがした。
「え、大丈夫?」
一瞬おぼつかない足取りに思わず肩を支えた。
「ああ、大丈夫。わりぃ。負けたくせに体は疲れてるみたいだ。」
ははっと空笑いをされてすぐに体から離れられてしまう。
ぼんやりしていて心ここにあらずといった感じで、一刻も早く休ませた方がいいなと思いゼリーや飲み物とアイシング用の氷もかごに入れレジに向かうと、
「湊?」
神崎監督がコンビニに入ってきてこちらに気づいた。
「あ、ちょうどよかったです。」
荷物を渡して未茉のこともお願いしようとした時、
「あー仲良く買い物だ?」
「!」
隣には昨日警察で見かけた未茉の兄、颯希がいた。
スーツのズボンのポケットに手を突っ込みながらこちらにやってくる。
「まさかコンドームとか買ってないよな?」
驚きの一言を発して買い物袋の中身を覗きこむ。
「ちょっと颯希!?」
「お前も監督ならちゃんと監視しといた方がいいぞ。影でこそこそ何してんのかわかんねーぞ。」
「…おい。」
横から低い声で威嚇するように未茉は兄を見上げた。
「おお、未茉。相変わらず無様な負け方だったな。」
悪気なくさらりと未茉を見下ろしながら放つ言葉に、耳を疑い、翔真はにわかに信じられなかった。
わざと意地悪で言ってるわけでもなく、冷たい目で冷酷な言葉を浴びせるそんな態度の兄は、とてもあの優しくて温厚なご両親や和希達兄弟にはやはりどう似ても似つかないからだ。



