…ダム…


「俺、初めて未茉ちゃん見た時、可愛いなって思った。」

誰もいない体育館で翔真はボールの音が響かせると、

「全国ミニバスの決勝前に、勝負しろ。って強気に1対1申し込んできて、俺をぼこぼこにしてくれたよね?」
懐かしそうに過去を思い出すように話し始めた。

「よく覚えてねーんだよなぁ。その辺。とりあえず嵐の相手チームにすっげぇ上手い奴いるからって対戦申し込んだのがお前だとは…」
頭をポリポリかきながら記憶を辿るが、やはり思い出せない。


「確かに弱虫だった。俺」
「…」
「試合で負けても泣かなかったのに未茉ちゃんに負けた時は、しばらく涙止まらなかったし。」
「あほか。でもお前らしいな・・。」
あきれてため息つくも、


「強くなろうって初めて思った。」

「…」
「いつも弱虫な俺が強くなろうと思わせてくれるのは、未茉ちゃんだった。」

真っ直ぐに真剣な目で未茉を見つめながら改めて伝えた。


「1対1で勝ったら、俺にもう一度だけチャンスくれる?」

何が言いたいのか、もちろん未茉にも分かっていた。
ボールを翔真に投げて頷いて、構えた。


「わかった。その代わり女だと思って手加減したら許さねぇからな。本気で三分かかってこいよ。」

「…ああ。今度は絶対忘れさせない。」

体育館には二人のバッシュの音が鳴り響いた。