ホテル隣接の体育館では男子達が明日の愛知戦に向けて練習をしていた。

ボールとバッシュの音だけが体育館には響いた。
誰も女子の試合を口にはしなかったのは、あの試合を見ていたらとても簡単に口にできなかったからだ。

「なにお通夜みたいな練習してんの。」

ふと現れた田島が体育館を覗くと、給水中のマイクに話しかけた。

「わ。びっくりした。しかもその格好…」
試合が終わって数時間立たないうちに田島はもうバスパンに履き替えてランニングしてる。

「切り替え早いな。」
「くよくよしてても仕方ないっしょ。負けは負けだし。」
「…なんだ。慰め不要か。」
少しホッしたように笑うと、

「へぇ。彼女には内緒で慰めてくれんだ?」
「怖いな…お前のその言葉は…」
その気が残ってるかを試すような誘いを苦笑いではぐらかすと、

「田島さん、未茉は?」
田島の姿を見つけると3対3を抜けて匠が心配そうにやってきた。
「あれ?心配する人間違えてない?」
「・・・っ。あ、静香ちゃんもだけど・・・。」
ため息つきながら苦笑すると、

「静香なら散々泣いて、今ホテルの食事爆食い中。白石は、行方不明。」

「行方不明!!?」
「なんて言うと、お宅のエース心配しちゃうか?・・ってあれ、珍しく真面目に練習してるじゃない。」
あんなに真剣に走って練習に打ち込んでる翔真の姿を見るの初めてかもしんないわ。と予想外だった。

「してもらわなきゃ困る。愛知との対戦だしな。」
「ふうん。じゃ王子が姫の仇をとってくれるのを期待するしかないか。」
「俺にも期待してくれよな。」

ポンっと田島の頭を軽く叩いて練習に戻ってくマイクの後ろ姿を見て、

「何よ…ばか。」
少しぎゅっとする胸を押さえながら呟いた。