両チームの挨拶が終わると、エマは一人さっさとイヤホンをして、アリーナを後にした。
喜びもせず当たり前のような涼しい顔して、たくさんのマイクを向けられる記者達のフラッシュの中に消えてった。
「うぁぁんうぁああんっっ…」
ロッカーではタオルを握りしめ静香の嗚咽混じりの大きな鳴き声だけが響いた。
「静香、いい加減泣き止め。うるせー」
「だってだってぇ…デートとがぁああ」
バコッ!!と思いっきり田島に殴られる。
みんな集合してる中、一人隅で壁に寄りかかり話さえもできずにいるうつ向いたままの未茉を前原は引っ張り、チームの輪の中に入れる。
「よく頑張った。本当に」
涙をこらえながら神崎は選手一人一人を称えるように拍手した。
「この点差で負けたのは、私の経験不足で私の責任だ。みんなは私が思ってた以上に王者愛知によくやった。だから胸張ってほしい。」
ベンチの控えの選手達も啜り泣いていたが、田島や石井、前園はもう切り替えたように涙ひとつさえ溢さなかった。
むしろその表情には清々しささえあった。
「明日男子が女子の仇を取ってくれるだろうから、今日はホテルでゆっくり休んで、男子の応援しよう。」



