「よしっ!!次は大成だ!!全国王者の俺らの強さ見せつけてやろうぜ!!」
さっきのことが嘘のようにいつもと全く変わらない鋭い眼差しで健の力強い掛け声ひとつで、
「「はいっ!!」」
部員達の背筋が伸びるような気合いの入った返事によって体育館に響きわたる。

(いつもと何一つ変わってないな…)

コートに立つといつもと何も変わらない兄の健に匠は少し安堵の表情を浮かべた。



「那奈、来てくれたんだ。」
試合が終わった三上が一階脇のすみに降りてきた那奈に気づくと、駆け寄る。

「うん…お疲れ様。」
「あれ、白石は?一緒じゃないの?」
「うん。途中で別れて…」
「びっくりしたよ。急に白石と一緒にいるもんだから。」

「ねぇあのね…」
「?」
「ずっと湊君の話聞いてたじゃない?」
「え?ああ…」
「湊君が星河さんのことで不安になるのもすごく分かった…」
「…」

「健さんも、湊君も、あの二人は…凄く辛そう。」


傍目からもそう映った二人のぶつけられないもどかしい思いに、彼女の胸は痛んだ。