「…俺を選んだんでしょ?」

悔しそうに涙をポタポタと頬に伝わせる未茉に行かせまいと確認した。


「そうだけど…だってアイツ腕相撲で負けたじゃん!!なのになんであたしに何も言わずに付き合ってんだよ!!」
唇を噛みながらごしごしと涙を拭ぐうも、翔真は呆れ返ったようなため息をつき、

「焼きもち?」
「面白くねーじゃん!影でこそこそ結城達みてぇに!!」
「それ焼きもちっていうんだよ。」

「ちげぇから!!そういうんじゃ…」
自分から聞いたのにヘタクソな言い訳なんか聞きたくなくて、未茉の両腕を思いっきり力強く引き寄せて
「んっ…!」
翔真の唇は未茉の唇を捕らえ、強引に奪った。

「やめ…!!翔…!!!」
逃げられないように腰を持ち上げられると、体が浮いて交わそうと首を振っても、力では敵わない。

「ん…や!!」
いつもより乱暴な舌使いに違和感しかなくて、体を突き放すようにドンッ!!と押し返す。


「大丈夫。見てないよ。」

「え…」
思わず健の方を見るも、もう二人の姿はなかった。


「もう行ったよ。よかったね。見られなくて。」
明らかな嫌みと怒った表情で未茉のリハビリポーチを拾って渡すと、

「健さんが他の女の子と一緒にいるの寂しい?」
「いちいちうるせぇな!!そんな人を試すような言い方してくんな!!」

「…そ。」
翔真も自分のバッグを肩にかけて歩きだす。
「ちょっと待てよ!!」
「帰るよ。」
「なんで!?せっかく来てくれたんだろ!?」
前へと回り込み全力で引き留めようとするも、


「せっかく来てこれだとキツイ。」

翔真の落ち込んだ顔に自分がしてしまったことへの後悔が一気に込み上げてきた。

「わ、悪かった!!本当にごめん!!ごめんって」
「謝られると余計に辛い。」
「…」


「付き合うことも、もう一度冷静に考えてみて。」


生半端な気持ちで翔真を選んだわけじゃないのに、そんな言葉を放たせてしまった自分がもどかしくて嫌になった。