「よっ!!と!」

飾り付けを手を伸ばしてカーテンレールにつけようと両手伸ばしてると、
「ほら。」
と匠兄が未茉の手からひょいっと飾りを取り手伝ってくれる。

「サンキュー。匠兄そういや、静香とデートしたんだろ?」
「え……デートっていうのかな…」
ちょっと言葉を濁した。

「国体の試合静香ちゃん、一生懸命頑張ってただろ?あのガッツを見てたら、負けたからデートできません。とは言えなかった。」

「優しいな。まぁ匠兄とのデートのためにすっげー頑張ってたからな。あと下着選びもな!!」
あははっと笑いだすと、匠は少し苦笑した。
「…その優しさが傷つけてしまうことになったよ。」
「なんで優しいとダメなの?」
優しさの何がダメなのか全く分からない未茉は首を傾げた。

「俺が未茉を忘れてないのに、他の子に優しくするのは相手を傷つけてしまうのかもな。」
未練がましいことは言うつもりはなかったが、思わず口から出てしまった。

「…俺も、健も嵐もどう忘れていけばいいかな。」

持て余したこの十年もの思いの行き場を探すように切ない目で告げられて、未茉は言葉に詰まった。


「どうしたら忘れられんのか、毎日考えてる。」
「匠兄、ごめん。」
「健も選べないのか?」
「…!…ごめん。」

「やーめーろ。」

ちょうど様子を見に来た健が止めると、
「健…」
「それはお前の自己満だろ?」
匠の肩を叩きため息をつく。
「俺なら許せて、湊なら許せない。ってもしそうだったらお前は未茉のことを本気で好きじゃねぇな。」

「…!」

「俺なら全世界中の男誰一人も、未茉が選んだ俺以外の男を許せねぇから。」