「おろせ!!」
バンバンと翔真の背中を叩きながら暴れると、チャイムが響き渡る屋上に到着する。
「あ…サボろっか。」
未茉の声などまるで聞こえなかったようにフェンス越しに町並みを見渡しながら呟く。
「おろせ!ってんだろ!?聞こえねーのかお前はよぉ!?」
「暴れて喧嘩する子を野放しにはできません。」
よいしょ。と未茉の腰を持ち両足を支えお姫様抱っこの体勢に変えると、
「だってムカつくじゃん!!」
「ムカついたからって何も喧嘩する必要ないでしょ?」
「あたしが翔真のこと好きなのってみんなに伝わってねぇし…」
「別にいいよ。俺に伝えてくれれば。」
そんなこと。とふっと余裕の笑みを浮かべる。
思わずぎゅっとそのまま翔真の首に手を回し抱きついた。
「ごめん。嫌な思いばっかさせて。」
「全然してないよ。」
「本当か?」
「うん。」
「キスしていい?」
イエスの返事が、翔真の優しいキスで返ってくる。
イライラしていた気持ちを解くように、落ち着かせてくれるのは翔真のキスだけだと思う。
「ん…」
唇を重ね合うこの瞬間、ほんと他のことがどうでもよくなるくらい、
言わずにはいられないくらい…、
「好き。」
ぎゅっと絡み付くように抱きつくと、
「え?」
「もう一回聞こうと聞こえねーふりすんな!」
バコッと叩くと、翔真は舌を出して笑った。