「うめぇーな。エマはやっぱり」
その喋り方もしぐさも…嵐にそっくりで、軽井沢で初めて会った時は驚いた。
(未茉のプレーは嵐に昔から動画で見せられていた。何十回何百回も。癖の強いドライブもフェイントの入れ方もそうは変わらない。)
「でも負けねーよ。」
この強気に何度も立ち向かう姿勢も。
「白石…」
逆転までの時間がない…。
白石ですらやはりエマに敵わないのか…と田島はボールを審判から受け取り、時計を見上げた。
ここで初めて勝負がついたと諦めそうになっていた時、
前園に変わって前原が交代された。
「え…」
田島は驚いて、神崎の方を見た。
なんで前原を入れたのか謎だったからだ。
前原なんて試合には出ないだろうとすら思っていたからだ。
監督の表情を見ると、まだやる気でこれっぽっちの負けの二文字など浮かんでない様子だ。
少しだけ休ませるようだ。
「田島さん、白石とWチームでエマを」
監督に指示されたことを前原が伝えるとボールを運ぶ。
「ああ…。」
(確かに前原から始まる白石のオフェンスは明徳女子の強みだが…、それがエマに通用するとは思えない。)
「前原さん!」
前原の登場に未茉は嬉しそうにコートに駆け寄る。
「ヘラヘラするな。…勝つよ。」
「はい!!」
冷たくキツイ口調で言われているのに飼い犬が主人に向けるようなキラキラした笑顔になるのを見て、田島も神崎も少し安心した。
東京のオフェンスが回ってきて、ベンチからの前原がボールを運んだ。
(大丈夫か…前原で)
ベンチや東京男子はそう思っていたが、静香がうまくディフェンスのエリーにスクリーンをかけて前原のボールさばきを妨げないようにする。
一気に未茉は走りだし、裏を回り着かれていたエマをわざと石井の方にぶつけ、前原からボールを手渡しされ、スクリーンをかけてもらうと、フリーになった未茉は一気にスリーをジャンプシュートで放つ。
「おし!!!」
「決まったぁぁ!!」
「スクリーンの使い方うまい!!」
客席とベンチがガッツポーズをすると、
「白石をフリーにさせるな!!」
ずっと平常心を保っていた愛知の原監督がこの試合で初めてコートにいる選手に声を出した。



