学校の正門には思った程、記者はいなくて、二人が走ってしまえば追い付ける人もいなかった。
「ごめんな翔真、迷惑かけて」
体育館の玄関につきバッシュに履き替えながら言うと、
「いいよ。かけてよ迷惑。」
彼は嬉しそうに笑った。
「お前…変わってんな。」
マジボケする未茉にズコッとこけそうになる翔真だったが・・・、
「未茉ちゃんと一緒にいて迷惑なんて思ったことないから。」
「そっかサンキュな」と笑うと、未茉の手を引っ張り、ぎゅうっと自分の胸の中に閉じ込めるように抱き締め、
「少し嫉妬はするけどね。」
「そうなのか?…じゃ妬かせてごめんな。」
その背中に未茉も腕を回して答えるように抱き締めた。
「おい・・・!!そこのお騒がせカップル!!とっくに朝練は始まってるぞぉお!!!」
いい雰囲気をぶち壊されるように野村監督に怒られると、
「あっははは!やっべぇ!!」
二人は体育館へとさっさと逃げ出す。
「なんだ!仲良さそうじゃん…」
「結城君達の言う通りデマなのかな?」
「でも、桐生君と抱き合ってなかった?写真…」
「湊君、惚れた弱味というかちょっと白石さんに振り回されてるのかな?」
女バスの一年メンバーは仲良しの二人の登場に安心したように見守る一方で腑に落ちない点もあったが、
「あ…ほら!白石さんのことだからさ、深い意味なく誰にでも抱きついちゃうんじゃないかな?!」
まさかこの前未茉が元気のなかった時のお相手が桐生嵐だったとは・・と事情を知る相沢が必死にフォロー入れるが、
「なんかはっきりしないよね…」
「星河さんとのこともあったし、意外と男の前だといい加減な子のかな?」
不穏な空気が漂い始め…、
「つか、また白石?最近いい気になりすぎてない?」
「有名人ぶって。男たらしすぎじゃね?」
「文化祭でもオギタクにもコクられてたよね?」
そして、他の外部活の通りかかった女子達にそう睨まれ始めていた。