「エマ、日本の高校行くんだって?」

チーム監督から聞いたのか、そう嵐に聞かれ、
「…分かんない。」
「おお!久々に声聞いたな!!」
感動して驚いたようにこっちを見てくるから、恥ずかしくなってすぐにイヤホンをした。

「なんだよ!!日本来いよ!!」
イヤホンを片方外されて、身を乗り出して勧めてくる。
「まだ迷っ…」
「日本でお前と同い年ですっげーうめぇ奴がいんだよ!!」
そう言いながらまたスマホで動画を見せてくる。
「こいつ、こいつ、この前全中で優勝したんだ俺の幼なじみ!!」
「…」
それはシライシミマという女の子だった。

何度か見たことがある嵐のプレーと酷似していた。
「エマと戦わせてぇな!!マジ見てぇ!!!」



そう嘆いてた嵐は今日、どっちの応援してる?)



ーースパッ!!
ボールはアーチを描きながら回転してゴールに吸い込まれてく。
エマは3ポイントを放った。
「はぁ…」
伊藤にスクリーンをかけられ、未茉は一瞬の隙をつかれシュートを許してしまった。

「「うわぁぁあ!!」」
拍手とともにエマのシュートが決まると歓声が鳴り響く。


(嵐…あなたが戦わせたかった女の子が私にやられてるのをちゃんと見てくれてる?

目の前では、唇を噛みしめながら私に必死についていこうとする彼女がもがいている。
それを見る度、弾ませた息と流れる汗が伝う全身の細胞がきっと、快感という喜びに覆われてる。


未茉のフェイクのかけ方、タイミングのずらし方、タッチシュートの足の踏み方、全部…
ーーバシッ!!
「!!」
ゴール下へくぐり抜けた未茉のシュートをエマは軽々とブロックした。

「くそ…!」
その悔しそうな顔までも、全てが、嵐にそっくりだ。