それは急に舞い込んできた話だった。



「「「CMデビュー?!」」」

「おう♪この美貌がお茶の間に流れるから、よく見とけよ!」

朝ホームルームでは、机の上に片足を乗せてポーズを決めながら、BIG3の前でどや顔をする未茉。

「月バスの中のスポーツ飲料のCMなんだけど、国体で活躍した現役高校生プレーヤーがすんだって!」

「ああ…これか!?」
結城はすぐにバッグの中から月刊バスケット誌を出して、ページをめくると、今月はエマがスポーツ飲料片手にポスターになっている。

「珍しいね。引き受けるなんて。」
彼女の性格上バスケ以外のことは面倒くさがりそうなのを知ってる翔真。
「撮影もうちの体育館で一時間くらいで終わるって言うし、なんせ、これよ。こ~~~れっ!!」
チャッキーーン!!とお金のサインを出して、

「5000円!!?」
「一時間で!!?」

「おうっ!!これで貧乏脱出だぜ!!!」


「よし、きた!!お前それで俺から借りた1000円返せよ。あ、あとこの前のパン代も。」
すぐに取り立て屋と変貌を遂げた結城をかわぎりに、
「俺も白石に800円とパン代立て替えてるよね。」
三上もここぞとばかりに取り立てに回り、翔真までもが、
「俺も今度返すってアイス20本くらいは立て替えてるけどね。」

「お前それは人よすぎだろ・・・。」
知らず知らず惚れた弱味に漬け込む恐ろしい女だ・・と未茉に冷たい視線を送る。

「返したらもうなくなっちゃうじゃぁぁああん!!!」
うぁぁぁあーーん!!と泣き出す。


「ほぉーらっ!!お前ら席つけぇ!」
新米が教室に入ってくると、「おっ♪」未茉の方を見て満面の笑みを浮かべやってくる。
「し・ら・い・しぃー!!お前、撮影が決まったらしいじゃないか!!」
「おお、お前のいない時に撮影してやるからよ」
「こぉらぁぁ!!なんでだよぉ!!」

騒がしい未茉と新米を横目に、三上は隣の翔真を見て、
「やっぱり好きな子が月刊誌のポスターとかになっちゃうと不機嫌にもなるんだ?」
明らかに不機嫌な様子の翔真に三上はクスッと笑った。

「そりゃあ…ね。」
また読まれたかと苦笑するも、
「またライバル増えるな。」
「二割増し…三割増しかな」
はぁっとため息をついた。