品川駅まで星河父が送ってくれて、健と匠と未茉で嵐の見送りに到着した。
「未茉、送ってやれ。」
そう言って星河兄弟は車から降りなかった。

新幹線の乗り場のホームに着くと、
「…未茉。」
「おう!」
「俺、ぜってぇ諦めねぇから。」
「何を?」
ポケッとする彼女にずっこけるも、

「未練がましいって笑うなよな。」
好きだって口にすればするほど、また好きになってく、そんなもどかしいジレンマに彼女を強引に抱き締めると、新幹線の発車のブザーが鳴り響いた。

「お前とタイトル取るって夢も叶えてねぇのに、諦めなんかつかねぇよ。」
「おう…ありがとな。想ってくれて」
背中に手を回し、とんとんと優しく叩く。


「いつか必ずお前も手入れてみせる。」

それだけ言い残して、すっと荷物を持ち新幹線に乗り込んだ。
振り返りもせず、真っ直ぐ鋭い視線で前を見る。
必ず全国で頂点に立ってみせる。昔そう言ってた時と同じ顔をしていた。

「いつもの嵐だな。」
ニッと未茉は安心したように頷いた。
「あたしも頑張るぜ。諦めねぇよ。」
左手を握りしめながら誓った。

いつか必ずーー


嵐は新幹線の中で座るとすぐにカップケーキを眺めて一つだけ開けた。
「お・・・」
カップケーキの先端に丸い生クリームとチョコチップがちょこんと乗っていて、それがどうしても、さっき見損ねたおっぱいにしか見えなかった・・・

「うぅ・・・やっぱりあの時、無理やりにでもぉ~・・・」
後悔の念に襲われていると、

「桐生嵐君。」

急に名前を呼ばれて顔をあげると、黒い帽子を深めに被った30代くらいの男性がこちらに名刺を差し出してやってきた。

「週刊weak…?記者か?」

名刺を読むと深々と男は微笑みと共に頷き、
「さっきの白石誠二さんの娘の白石未茉さんだよね?仲よさげに抱き合ってたけど…、そういう関係?」