きっとここにいるだろう。

その兄貴の予感は当たっていて、バスケットゴールのある近くの公園で嵐は一人ボールをついていた。

「嵐、大丈夫か?」

声をかける匠にも振り向かず、ただシュートをリングに向けて放っていた。
リングから嫌われたボールを匠がジャンプして取り、
「ほらっ。」
嵐にパスを出す。

「…」
不貞腐れている嵐がそのボールを両手で回していた。
「健も、未茉に振られて落ち込んでんだよ。ああ見えて。」

「え…?!」
その事実に顔を上げて匠を見た。

「健が振られた?!」
「ビックリだよな。」
心苦しそうな苦笑いを浮かべて頷いた。


「どういうわけか、未茉は湊が好きで付き合うんじゃないか?」

「…ずいぶんあっさりしてんじゃねぇーか匠兄。あんなに未茉のこと好きだったのに、よくあんな女に切り替えられたな?」
「あんな女?切り替え?」
「とぼけんなよ!明日デートすんだろ!!?」

「あ…ああ、静香ちゃんのこと?違う違うそんなんじゃない。白状すれば、俺だってまだ未茉のこと好きだよ。」
「…」
「ずっとあった気持ちが急になんて変わらないし。変えられるものじゃないだろ?でも不思議でさ、」
「何が?」

「健の未茉への想いには、俺は昔から太刀打ちできない。だから未茉が健を選んでくれたら、未練なくすっぱり諦めきれるんだけどな。」

「……」
「一番側で見てきて、それだけは間違いなく思う。一生健には敵わないなって。」
「……」
「お前も、小さい頃からいてそう思うところはあるだろう?」

「あるよ…だから俺はぜってぇ二人には負けたくなかった!!」
拳を握りしめてーーそう唇を噛み締めた。