震える手でそれを耳まで移動させ、もう片方の指を使ってダイヤルを回す……。


119。


最初の1の数字に触れてダイヤルを回すと、それはスムーズに動いた。


ダイヤルはジーッと音がしてゆっくりと元の場所へ戻っていく。


マリに変わった様子はない。


どうやら、電話を使ってもなにも起きないみたいだ。


ホッと胸をなでおろした次の瞬間だった。


ダンッ!! と大きな音がして床が揺れた。


咄嗟にマリを守るように一緒に身を屈めた。


「マリ、大丈夫か!?」


聞くと、マリは呼吸をすることすら忘れて一点を見つめていた。


その視線の先を追いかけて顔を動かしていく。


そこは壁だった。


美久が座りこんでいた壁。


なにもなく、ただ平面が続くだけだったはずのそこには何本もの太い杭が突き出していた。


「なっ……!」


思わず声を失った。