窓を割ろうと試みても、ドアを壊そうと試みても、それらはびくともしなかった。


ここはもう俺たちの知っている学校ではないのだ。


そう理解したとき、俺たち3人はロッカーへと視線を移動させていた。


あの中から響の声が聞こえてくる。


それならすぐに助けに行きたいのだが……。


それでも俺たち3人は動けずにいた。


足元に転がった雄大の死体が、俺たちの足を重たくさせる。


その上、この教室には奇妙なものが存在していた。


普段教室内にあるはずのないものが、あるのだ。


「あれって電話だよね?」


震える声でマリが言う。


さっきまで泣いていたマリだけど、今はどうにか涙が引っ込んでいるようだ。


俺は「そうだな」と、頷く。


教室の真ん中に置かれている机の上に、電話がある。


それは映画などで時々見かける黒電話で、実物を見たのはこれが初めてだった。