でも俺は、声をかけてきたのが響だとわかった瞬間、歴史の教科書を閉じていた。


「別に?」


と、ぶっきらぼうに返事をする。


「なんだよ、どうしてやめるんだ?」


響は首を傾げて聞いてくる。


お前が見てくるからだよ。


心の中でそう返事をした。


響は学年でも1位2位を争う秀才で、その上スポーツもよくできた。


俺がどれだけ勉強をしたって、響に勝つことはできないのだ。


「雄大は歴史の成績いいよな。日本史も世界史も、学年トップじゃん」


響の言葉に俺は曖昧に頷いた。


得意科目でまで響きに負けることは許されないと、自分自身が思っていたからだ。


「それがどうしたんだよ。お前は他の科目でほとんどトップだろ」


嫌みを込めて言うと、響は困ったように眉を下げ、そして笑った。


「そんなの大したことじゃないよ。俺は好きで勉強しているわけでもないし」


その声は消え入りそうだったので以外だった。