そう思うばかりで体は少しも動かない。


雄大への恐怖心が勝っていて、俺は伸ばされた手を掴むことができなかった。


やがて、雄大は動かなくなったのだった。


「なにこれ、どうしてこうなるの!?」


マリがヒステリックな声を上げる。


俺は壁に背中を預けてずるずると座り込んでしまった。


なんだこれ。


そんなの俺が聞きたいよ。


美久が教室のドアに駆け寄って必死で開けようとしている。


しかし、さっき入ってきたはずのそのドアはいつの間にか閉められ、開かなくなっているようだ。


「開かない! 誰か助けて! ここから出して!」


美久はドアを何度も殴りつけて外へいる誰かへ向けて声を上げる。


しかし、誰も返事はしない。


誰も助けてはくれない。


やっぱり、教室に入るべきじゃなかったんだ。


あの時の嫌な予感は当たっていたんだ……。


絶望感がひしひしと流れ込んでくるこの空間で、俺は教室後方へ視線を向けた。


そこには掃除道具入れが置かれていて、中から響の悲鳴が聞こえてきている。


その声をぼんやりと聞いていたのだった。