「真っ暗だね……」


そう言ったのは美久だった。


しかし、その姿は暗闇に溶けて全く見えない。


目が慣れてくるような暗闇ではなく、いつまでも待っても闇が広がっている。


「窓に暗幕がひかれてるみたいだな」


この声は雄大だ。


「電気、つくのなか?」


これはマリ。


同じE組の生徒だから、声だけで一応の判別はつく。


「響! どこかにいるの!?」


久美が暗闇の中で叫ぶ。


その瞬間「ここだ! ここにいる!」と、声が聞こえてきた。


誰かが俺の近くで息を飲む音が聞こえてきた。


響の声は随分と離れた場所から聞こえてきた。


俺たちはB組の前方の窓から入ってきたから、きっと教室の後方にいるのだろう。


「すぐに行くからな!」


俺はそう声をかけて、壁に向けて手を伸ばした。