あたしはしゃがみ込み手を伸ばす。


鍵に指先が触れる寸前で、一旦動きを止めた。


これが響が言っていた鍵で間違いないと思う。


だけど、この鍵を持ち上げるとなにかが起こるかもしれない。


今までこの教室での出来事を思い出すと、十分にその可能性をはらんでいた。


あたしは鍵を手にとることができず、時間が止まってしまったかのような感覚に陥った。


できればこのまま悪夢から目覚めたい。


暖かな布団の中で目を覚まし、なんだ、夢だったのかと笑いたい。


しかし、それはかなわぬ願いだった。


だってこれは現実だから。


痛みも悲しみも苦痛も、すべて本物だとわかってしまっていたから。


あたしはもう1度ゆっくりと深呼吸をした。


鍵を取ればあたしもみんなと同じように死んでしまうかもしれない。


でも、もう鍵を手に取る以外の選択肢はない……。


グッとキツク目を閉じて手を伸ばす。


鍵が指先に触れたのを感じた瞬間、素早くそれを握り締めていた。