力で相手をねじ伏せて、言うことを聞かせるのが当たり前の世界だったから。


勉強はひどく苦手だったけれど、中学に上がると周りの子供たちもだんだん大人になり始めたこともあって、俺も苦手なりに勉強をしはじめた。


「光平ならきっと大丈夫、受験には成功するからね」


養護施設の先生に笑顔でそう言われたら、今度はその気持ちにこたえたいと感じ始めていた。


施設内の環境はいいとは言えなかったけれど、それでも先生はいつでも平等に優しい人だったから。


着ている服がいつもお下がりでも、掃除を押し付けられても、それでもここでやってこられたのは先生の優しさがあったからだった。


そして、合格者発表の当日。


先生と共に高校の校庭に張り出された合格者番号を見に行った時のことを、俺はきっと一生忘れない。


俺の受験番号、1201番を見つけた時の先生の笑顔。


「ほらね、大丈夫だって言ったでしょう?」


自信に満ちたその笑顔に俺は胸がいっぱいになった。


入学後はやっぱり俺の存在を怖がる生徒たちはいた。


なんていっても、ずっと鍛えてきたし、施設内と同じように常に険しい表情をしてしまったりする。


それでも俺はこの高校に入学できたことを、ホコリに思っている。


3年生に上がり、こんな日が来るなんて思いもせずに……。