放課後の校舎内は人気がなくて静かだった。


聞こえてくるのは部活棟からの声ばかり。


友人たちと早く合流するために、俺は早足でE組へと向かった。


教室に入ると後方に女子生徒の姿を見つけて足を止めていた。


一瞬誰がなにをしているのかわからなかった。


なんとなく息をひそめ、ジッと女子生徒の様子を観察する。


するとそれが早紀で、花瓶の水を入れ替えてきたのだと理解できた。


「そんなことしてくれてんの?」


近づき、そう声をかけた。


早紀は自分以外に誰かがいるとは思っていなかったようで、文字通りその場に飛び跳ねて驚き、振り向いた。


クリッとした大きな目がさらに見開かれていて、思わず笑ってしまった。


「そんなに驚く?」


「ご、ごめんなさい」


早紀はすぐにうつむいて謝ってきた。


「謝る必要はないよ。ビックリさせたのは俺の方だし」


言いながら花瓶の中のピンク色の花に視線を向ける。