俺が早紀の存在を知ったのは、正直3年E組に上がってからのことだった。


それまでは早紀の存在は知らなかった。


地味で、目立たない子だったから。


「やべ、教室にスマホ忘れた」


放課後、校門から出たところでスマホを持っていないことに気がついた。


普段は制服のズボンのポケットに入れているのだけれど、今日にかぎって忘れてきてしまったのだ。


これから友人たちと遊んでから帰る予定だったから、とんだ失敗だった。


「なんだよおい」


友人たちは『勘弁してくれよ』という表情をしている。


「悪い。取りに行ってくるから、先に行っててくれ」


どうせ行先はいつものカラオケボックスだ。


先に行って部屋を確保しておいてくれた方が嬉しかった。


「わかった。ついたら部屋番号教えるから、連絡しろよ」


「おう」


俺は友人たちに手を振り、1人で教室へと戻ったんだ。