休憩時間になるとお決まりのように文庫本を取り出して読み始める。
髪の毛は伸ばし放題で重苦しく、いつも前髪で自分の顔を隠している。
そんな早紀の、蔭のあだ名は『浮浪者』だった。
決してそこまで汚いわけではないが、化粧やオシャレに敏感なあたしたちにとっては同じようなものだった。
どうしてもっと綺麗に髪を整えないのだろう。
どうして少しくらい化粧をしないのだろう。
どうしていつもダサイ制服の着こなしをしているのだろう。
そんな話題は尽きなかった。
そしてあたしも、何度も早紀のことを『不良者』と呼んだことがあった。
「いいか。ここで前を歩かないと、お前は今よりもっとヒドイ目にあう。E組の汚点になるんだ」
光平が威圧的に早紀へ言う。
早紀がうるんだ瞳をあたしへ向けてきた。
しかし、あたしは咄嗟に目をそらしてしまう。
そうだよ。
早紀が行けばいい。
いつでも誰かの後ろにいて、前には出ないんだから。
そんな気持ちが頭をもたげてくる。
こんな状況で前に出ればどうなるか、もう充分理解している。
梓のように死ぬかもしれないのだ。
髪の毛は伸ばし放題で重苦しく、いつも前髪で自分の顔を隠している。
そんな早紀の、蔭のあだ名は『浮浪者』だった。
決してそこまで汚いわけではないが、化粧やオシャレに敏感なあたしたちにとっては同じようなものだった。
どうしてもっと綺麗に髪を整えないのだろう。
どうして少しくらい化粧をしないのだろう。
どうしていつもダサイ制服の着こなしをしているのだろう。
そんな話題は尽きなかった。
そしてあたしも、何度も早紀のことを『不良者』と呼んだことがあった。
「いいか。ここで前を歩かないと、お前は今よりもっとヒドイ目にあう。E組の汚点になるんだ」
光平が威圧的に早紀へ言う。
早紀がうるんだ瞳をあたしへ向けてきた。
しかし、あたしは咄嗟に目をそらしてしまう。
そうだよ。
早紀が行けばいい。
いつでも誰かの後ろにいて、前には出ないんだから。
そんな気持ちが頭をもたげてくる。
こんな状況で前に出ればどうなるか、もう充分理解している。
梓のように死ぬかもしれないのだ。



