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突然水嵩が少なくなり、あたしは慌てた。


水がどんどん教室の外へと流れ出し足元をすくわれる。


「机につかまれ!」


響の声が聞こえて初めて、床にしっかりと固定されている机があることに気がついた。


あたしは必死に手を伸ばす。


水から顔が浮き沈みして、ときどきむせながら。


指先が机の足に触れて、あたしはそれを強く握りしめた。


水はゴオオオオッと音を立て、まるで濁流のように排出されている。


いつの間にか教室のドアが開かれ、そして放出されていた水は止まっていた。


「夏海、大丈夫か?」


水の流れが穏やかになったとき、響が何かを握り締めて近づいてきた。


「どうにか……」


あたしは大きく深呼吸をして答える。


全身ずぶぬれで、水を飲んで胸が苦しい。


それでも呼吸ができている。


あたしも響も生きている。


それだけで胸がいっぱいになっていく。