え……。


アイツはもうこの世にはいない?


どうして?


なんで?


全然頭が追い付いていかない。


どうしてそんな結論が出るのかわからない。


あたしはまた両手で頭を抱えた。


なにも考えたくない。


アイツのことを思い出したくもない。


それがただの現実逃避だとわかっていた。


わかっているのに、現実を直視することができない。


「夏海。ちゃんと見ろ」


響があたしの手を握り締めて言った。


それでもあたしは左右に首を振る。


水はすでに胸の近くまで上がってきている。


いつまでも現実から目をそらしていることはできない。


そうしている時間にも、自分の死が迫ってきている。


「ちゃんと見よう。俺たちがアイツにしてきたことを……」