響の誕生日じゃなかったんだ。


違ったんだ。


あたしは胸の前で両手を握りしめたまま、立ちつくしていた。


宝箱の下から出現した銃口は煙をあげている。


カタカタと全身が震えていることに気がついた。


それに合わせて腰まで届いた水が揺れている。


「秀……」


響が秀へ近づいて行く、


水に浮かんだ秀はなにも話さない。


少しも動かない。


まるでリアルなマネキンのようだった。


「なんでだよお前……」


響が秀の体を抱きしめたその頬は涙に濡れている。


まるであたしが優香にしたときのように、秀の体を強く抱きしめる。