あたしは咄嗟にその場から飛びのいた。


足元に一本貼られているだけなら、それほど警戒することもなかっただろう。


だけどこのピアノ線は、まるでここから先には行かせないというように、あたしたちを邪魔している。


「これに触ったらどうなるんだろうな」


光平が額に冷や汗を浮かべて言った。


それっていったいどういう意味?


そう質問したかったが、できなかった。


恐怖で声が喉に張り付き、出てこないのだ。


「映画や漫画の世界なら、体が切り刻まれたりとか、なにかのトラップが作動するんだろうな」


凌はピアノ線を観察しながら答える。


体が切り刻まれるという言葉に強く身震いをした。


後ろに立っていた早紀の手を強く握りしめる。


早紀はずっと泣いていて、すすり泣きの声が聞こえ続けていた。