期待に胸が膨らんだとき、不意に前を歩いていた光平が立ちどまった。


ジッと足元を見つめている。


「どうしたの?」


声をかけると、光平が少し身をずらし、顎で足元を見るように促してきた。


視線を向けてもなにもない。


首をかしげたとき、キラリと光る物が見えて「え?」と口にしていた。


「ピアノ線だ」


隣りに立った凌が呟くように言う。


その通り、一見なにもないように見えるけれど、足元にはピアノ線がはられていたのだ。


「なんでこんなところに?」


疑問を感じ、背をかがめて触れようとする。


それを光平が止めた。


「やめろ。むやみに触るな」


「そうだな。このピアノ線、天井まではられてる」


凌が視線を動かして言った。


驚いて確認してみると、見えないピアノ線は右から左、左から右へと、あちこちに張り巡らされているのだ。