兄弟たちにはできるだけ栄養がつくものを別で作っていた。


「優香ってば、名前の通り優しいんだから」


学校でお年寄り向けの料理の本を読んでいると、梓がそんな風にからかってくる。


1年D組のクラスメートたちは、今日もみんな元気だ。


「別に、普通でしょ」


「どこが普通なの? あたしなんか家ではなぁんにもしてないよ?」


梓はそう言いながら手鏡を取り出してメークを直し始めた。


今でも十分マスカラを重ね塗りしているのに、更に濃くするみたいだ。


「梓はスッピンのままでも可愛いのに、頑張ってメークするでしょ? それと同じだよ」


「……は? なにが同じなの?」


梓は瞬きをして聞き返してくる。


あたしが毎日料理をして、料理の勉強をするのは、梓のメークと同じこと。


そう言いたかったのだけれど、伝わらなかったみたいだ。


「あたしはおじいちゃんやおばあちゃんが好きなの」


「あぁ~それはわかるかも」


梓は鏡から目を離して言った。


「梓の家も一緒に暮らしてるの?」


「ううん。でも、遊びに行くと絶対にお小遣いくれるし、大好き」


そう言ってニカッと笑う梓に、あたしは苦笑いを浮かべた。