「高校生になったんだもん。彼氏くらい作らなきゃね」


同室のその子は彼氏を作る気満々で言う。


「でも、そんなに簡単にできるかなぁ?」


「そんな弱気じゃダメだよ! ライバルは沢山いるんだからさ」


そう言われても今のあたしにはピンとこなかった。


好きな人がいれば毎日楽しいと思う。


それが彼氏ともなれば、それはもっともっと楽しいことだろう。


彼氏ができたことがないからよくわからないけれど……。


でも、今のあたしはとにかく学校と寮の生活に慣れることが最優先だった。


その次は勉強。


その次は部活動だ。


恋愛なんて、夢のまた夢のような話だった。


「そんなこと言ってる優香は好きな人いるの?」


「いないんだよねぇこれが」


はぁ~あ、と大きなため息と共にそんな返事があった。


「先輩とかはさすがにかっこいいなぁと思う人が多いけどさ、同級生ってパッとしないよね?」