早紀の顔がサッと青ざめるのがわかった。


あたしはハサミを取り出すと早紀の前髪に押し当てた。


「やめてっ!」


早紀は身を引くが、梓は許さない。


「大人しくしてよ!」


思わず怒鳴ってしうと、早紀はビクリと身を震わせて、大人しくなった。


その後はあたしの出番だった。


美容師志望のあたしの腕はまぁまぁだ。


今までだって沢山の友人たちの髪を切ってあげてきた。


どれもいい出来栄えで、みんなしてあたしに感謝してくれた。


早紀はそれを知らず、ただ自分はイジメられているのだと思い、涙を流す。


だけどあたしはそんなことはしない。


そんな幼稚な人間じゃないもの。


「ほらできた!」


ものの5分で早紀の前髪はスッキリ軽くなっていた。


「いいなぁ」


思わずそんな声を漏らす子がいて、あたしは自信に満ちた表情を浮かべる。


「切ってあげようか?」


ハサミを持って移動するあたしの後ろで、早紀はずっと泣いていたのだった。