「一度閉じれば、もう安全だ」


大祐は短く説明をするだけで、後は黙々と椅子を投げてトラバサミを作動させていく。


それなら面積の多い机を投げた方が早そうだ。


そう思い、あたしは机を両手でつかんだ。


「ダメ!」


その瞬間ミチルの声が聞こえてきて、あたしは手を止めた。


ミチルはさっきまでより汗をかいていて、息も苦しそうだ。


「どうしたのミチル?」


慌てて駆け寄ると、ミチルの体はフラリと揺れた。


倒れそうになりながらも、なんとか両足で踏ん張っている。


「大丈夫……でもなんだか変なの。視界が歪んで見える」


ミチルの言葉にあたしは慌てた。


極度の緊張のせいだろうか?


それとも、なにか他に原因が……?


教室の中を見回してみると、先ほどミチルが倒した花瓶が視界に入った。


でもあれはなんでもなかったはずだ。


ミチルに危害が加わった形跡はなにもない。