書き上げるまでのペースは格段に遅くなってしまうが、そのおかげで平均8万文字の作品が書けるようになってきた。


作品をキチンと完結させることも難しさ。


プロと同じだけの分量を書く難しさ。


そのどれもが俺にとって大きな壁だったけれど、それ以上に書くことが楽しかった。


俺はいつか小説家になる。


心にそう決めて、毎日ペンを握っていた。


『創作ノート』は俺にとっての宝物だ。


まだ少し恥ずかしくて誰にも見せることはできないけれど、大切なものだったんだ。


だから思わず、手を伸ばしてしまった。


3年C組の異様な空間の中だったのに……。


トラバサミに挟まれて悶絶しながら、俺は『創作ノート』に手を伸ばした。


意識が遠のいて行く寸前でノートを引きよせ、抱きしめたんだ。


あぁ、よかった……。


安堵した次の瞬間、俺の鼓動はピタリと止まった。