「文字だけの本は国語の教科書だけでいいや」


そう言ってポンッと文庫本を投げ出した。


「そんなこと言わずに、少しだけ読んでみれば?」


母親からの何気ない一言。


「だって、マンガじゃないんでしょ?」


「そりゃあマンガとは違うけど、でも小説も面白いのよ?」


その言葉に半信半疑ながら俺は投げ出した本を手に取った。


パラパラと適当にめくってみるけれど、どこを開いても文字ばかりで、眺めているだけで頭が痛くなってきそうだった。


そんな俺に、母親がなにか思いついたようにリビングから出ていった。


母親がリビングに戻ってくるまでの間に最初の一行だけ目を通して見た。


「その日は……よく晴れた……日曜日だった」


ダラダラと最初の一行を読み上げて、大きくため息を吐きだした。


よく晴れた日曜日だってさ。


現実では雨の日の日曜日なのにさー!


余計につまらなくなって、再び本を投げ出したその時だった。