愛恋のキス




「……ぐっ」

 霧谷に遊ばれてしまうなんて最悪だ、恥ずかしい。このまま誰も来てくれなかったら……と考えただけでさらに顔が熱くなる。


 そういえば、私と霧谷のやり取りをバス内で見ていた人はいるのだろうか。

 ほとんどの生徒がバスを降りていたため、もはや誰が残っているのか私の座席からはわからないけれど、誰もいなかったことを願うしかない。


「藍原ちゃん……?顔塞がれてるの結構きついかも」
「え……あっ、ごめん!」


 霧谷を離そうとするのに必死で、まさか彼の息を止めるかのように顔を覆っていたとは思わなかった。

 慌てて手を離すと、霧谷は少し息苦しそうな顔をしていた。


「だ、大丈夫……?」
「ん、大丈夫」

「本当?少し赤くなってる……さすがに強く塞ぎすぎたよね」

「……ふっ」
「え……」


 複数の男子がバスに乗り込んできたのと同じタイミングで、突然霧谷が小さな笑みを漏らした。