愛恋のキス




 その結果、体が石のように固まってしまい、動けなくなった。


「そんな表情されたら、余計に手を出したくなるんだけどな」


 じっと霧谷の瞳が私を捉える。何か言い返さないといけないと頭ではわかっているけれど、何も言葉が出てこない。

 流されるような、呑まれてしまうような。
 目の前の彼がかなり危なく思えた。それでいて、抗えない。


「拒否しないってことは……」


 霧谷の大きな左手が、私の右頬に添えられる。もしかして、これって……。

 そんな、相手が霧谷なんて。心の準備すらできておらず、咄嗟に目を閉じてしまう。


 キスなんてものは経験したことがなくて、どうしたらいいのかわからなくなっていると……。


「……でさ〜」
「まじで……」


 バスの入り口近くから複数の声が聞こえてきたことで、ハッと我に返る。

 いつもよりずっと近い距離にいた霧谷に驚き、その顔に私の両手を押さえつけてしまう。