愛恋のキス




「この状況で避けられるのは悲しいんだけど」
「避けるに決まってるでしょ!早く元の座席に戻って!」

「んー……俺が素直に受け入れると思う?」


 静かなバス内で、霧谷がニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。


「な、なに……」


 スッと右手が伸びてきて、閉められているカーテン越しに彼の手が窓に添えられる。

 不意にカーテンが閉まっていて良かったと安心してしまったけれど、今はそれどころではないというのに。


「言っただろ?相性がいいのか試してみようって」
「ふざけないで!」

「藍原ちゃんって男に慣れてないよな。強気なくせして、相手が強引だと抗えない」

「……っ、そんなことは」
「それでいて興味があるんだよな?こういうこと」


 霧谷の左手の指が私の頬を撫でる。自分でもわかるくらい触れられた部分が熱を帯び、それが全身に伝わった。

 鼓動が速まり、初めての感覚にどう対処していいのかわからなくなる。