愛恋のキス




「なんか喉渇いたから飲み物買って来ようかな。汐音はいる?」

「あっ、じゃあ私も行っ……」
「いいからいいから。何が飲みたい?」


 まるでついてくるなと言うような圧に、それ以上何も言えなくなる。

 何か理由でもあるのかなと思い、オレンジジュースと伝えてお金を払おうとしたけれど、受け取る前に行ってしまった。


 多くのクラスメイトがバスを降りてしまい、瞬く間に静寂が流れてしまう。

 今からでも沙良を追いかけるか、一人で外に行くか悩んできた時だった。


「……え」

 突然隣に人影を感じ、顔を上げた時にはもう隣の座席が軋む音がしていた。


「やっと藍原ちゃんの隣ゲットできた」
「なっ……」

 霧谷は一切躊躇うことなく私の肩に頭を置いてきた。一瞬の出来事で状況の把握ができず、霧谷の行動の方が早かった。


「何で急に……離れてよ」

「さっきまで大人しくしてただろ?藍原ちゃんが女子と楽しそうに話してたから、さすがに毎回邪魔するのは悪いなって。でも俺もお菓子食べたかったなぁ」

「大人しくって……酔ってたんでしょ。薬飲んでマシになったの?」

「藍原ちゃんは酔う体質なんだな」
「……まあ酔う時があるから飲んでるだけ」


 酔わない人に比べると酔いやすいだろう。けれど体調や場面によって変わるため、毎回酔うわけではない。