「ふふっ、汐音って本当に可愛いなぁ」
「ど、どこが!」
「妹みたいで可愛い」
「それは澪が姉御肌だからでしょ!」
可愛いと言われるのはむず痒く、全力で否定する。事実、恋愛や恋人に憧れはあるけれど、過去に一度もいたことがなければ告白された経験すらない。
「誰か汐音の可愛さをわかってくれる男は現れないかねぇ」
「わかってもらわなくていいから!」
「そんなこと言ってると一生彼氏できないよ?」
澪の言葉が心臓を貫いた。
彼女には過去に2人の彼氏がいたことがあり、現在の彼氏は3人目だと言っていた。
「私には勉強があるからいいの!」
勉強が恋人だと宣言する勢いで言葉を放ち、無理矢理話を中断させる。
こういうところも彼氏ができない理由だとわかっているけれど、今は学年1位の座を狙って躍起になっていた。
「諦めるのはまだ早いと思うけどな」
澪は何を見据えているのかわからなかったけれど、それ以上は何も言ってこなかった。