愛恋のキス




 一応聞かなかったフリをして黙っていたけれど、明らかに気まずい空気が流れてしまう。

 万年2位。
 そうか、私は万年2位の女で広まっているのか。


「お、俺はもう行くな!」

 男は私から逃げるように自転車を漕ぎ始め、その背中はあっという間に遠くなってしまう。


 全ては霧谷のせいだ。あいつは私にこんな嫌がらせをしてなにが楽しいのだろう。


「なんかごめんね……瑞樹も悪気はないと思うんだ」
「そう、なんだ……」


 思わずそんなわけないと言いそうになったけれど、相手は霧谷ではなく、その友達だ。

 庇うのも無理はない。ここは大人しく相槌を打っておく。


「ただ純粋に藍原さんのことが知りたくて声をかけたと思うんだ」

「私のことが知りたい……?」


 霧谷が?
 絶対に馬鹿にしたいだけだと思うのだけれど。実際に見下し発言を何度もされたし。