「……うそ」
その内容は、電車に乗り遅れたから先に行ってほしいとのことだった。
澪に感謝したばかりなのに、まさかの展開に思わず声が漏れてしまった。
けれど乗り遅れてしまったものは仕方がない。私が責める理由なんてないし、澪にわかったとだけ返信して足を進めようとした時だった。
「……藍原さん?」
「えっ……」
柔らかな声が私の名前を呼んだ。それも男子の声で、不思議に思った私はパッと顔をあげると、改札を通ってすぐのところに昨日会ったばかりの西山くんの姿があった。
彼を知らないと言った時の澪はすごかったな……って、今はそれどころではなくて!
どうして彼が私の名前を知っているのだろう。1年は同じクラスではなかったし、もちろん2年も別々のクラスだ。
それなのに私の名前を呼ぶだけではなく、なんと目の前にやってきた。