愛恋のキス





『君さ、また俺に敵わなかったんだな』


 忘れもしない、初めて瑞樹と言葉を交わした時のことを。

 最悪の始まり方で、かなり腹が立って『ふざけるな』と叫んだことだって覚えている。



 あれから1年経った今もまた、同じような言葉に同じような表情をされてしまうなんて。

 これは屈辱だと思い、怒りたかったけれど……それよりもピンチをどう乗り越えるかで頭がいっぱいだった。


「負けた、けど……私なりに全力を出したつもりだし、結果は良かったし……」

「んー?聞こえないなぁ?」


 勝者の余裕に敗者の焦り。
 周りからは今の私たちがどのように映っているのだろうか。


「わ、私は教室に戻っ……」
「……まさか“あの約束”、忘れたわけじゃないよな?」

「……っ」


 ここは逃げる選択を取ろうと思ったけれど、後ろから瑞樹の片腕が腰にまわされ、周りに聞こえないように耳元で、さらには低い声で尋ねられる。

 忘れられないし忘れられるわけがない。
 今回、私が負けたのなら……キス以上のことをする、なんて。