「汐音」
「はい……?」

「あんたそれはさすがに疎すぎる!西山くんの存在を知らないって本気で言っているの!?」

「さっき澪が助けてもらってた春哉って人が西山?」
「そうに決まってるでしょ!」


 いや、残念ながら記憶にない。それほど有名な人なのだろうか。霧谷のインパクトが強すぎて、印象が薄れている……わけでもなさそうだ。澪の反応がそう物語っている。


「でもかっこいいなとは思ったよ?すごく優しそうで……」

「まさか汐音がここまで疎かったなんて」
「えっ、と?」

「西山くんは霧谷と1.2を争うイケメンなの!紳士的な人で、西山くん派も多いのよ。それなのに汐音には霧谷しか頭にないのね!」

「ありえないから!ただ霧谷を敵対視ばっかしていて他の男子のことは……」

「西山くんも毎回テストの順位でトップ10入りしてるから!なんなら上位5名にも入ってるよ!」


 澪の言葉を聞いて、私は霧谷ばかりに目を向けていたのだと思わされる。