愛恋のキス




「藍原ちゃん、隣いい?」

 3日ぶりに聞いた霧谷の声が懐かしくて、ビクッと肩が跳ねてしまう。

 返事すら出来ずにいると、何も言わずに霧谷が私の隣……ではなく、私を後ろから抱きしめてきた。


「……っ、霧谷」

 こんなことしていいのかと言いたくなったけれど、ふと心の中で淡い期待を抱いてしまう自分がいた。


「あの日も俺のために背中押してくれたんだよな。本当はこんなに泣くぐらい我慢してたのに」

「泣いてなんかっ……」
「……泣いてなんか?」

「……っ」


 私の顔を覗き込もうとする彼に強気で言い返そうとしたけれど、優しい眼差しを向けられ、また涙があふれてしまう。


「ふっ、可愛い。藍原ちゃんって意外と泣き虫?」
「‥…知らない」


 知らない、そんなの。
 ただ一つ言えるのは、こんなにも泣いたのは久しぶりだということぐらいだ。