恋に憧れは抱いていたけれど、誰かを好きになることなんてなかった。

 だから私が、いつから霧谷を好きになって恋をしたのかは正直曖昧である。


 ただはっきりと言えるのは、いつのまにか霧谷のことでドキドキしたり、嬉しくなったり、切なくなったり、苦しんだり。

 自分でも驚くほど霧谷という存在に振り回されていた。


「よく頑張ったね汐音」
「そうだよ。もう我慢しなくていいんだよ」


 霧谷とデートをした日から3日経った。
 あの日、私は先に帰ったけれど、霧谷から連絡が来ることはなかった。

 何度も「どうだった?」とか、「大丈夫?」とか連絡しようと悩んだけれど、勇気が出ずに送れなかった。