愛恋のキス




 けれど大丈夫だから。

 苦しいのなら相手と距離を取って、今つながれている手を離せば良いのに、離せずに相手の隣にいることが私の気持ちだと証明していた。


「だから今日、ここに来たんだ。いつまでもダサい俺じゃ、藍原ちゃんが呆れて離れていくかもって考えたらかなり嫌過ぎて」

「え……」


 また、期待させるようなことを言う。

 けれど期待した分、あとになって自分に返ってくるとわかっているから、「なんのこと?」とはぐらかしてみた。


「俺さ、藍原ちゃんが思ってる以上に藍原ちゃんに惚れ……」

 その低い声が私の鼓動を速め、言葉の続きを待っていた時だった。


「……瑞樹?」


 どこかか細く、高いトーンの声が霧谷の名前を呼んだ。

 私だけではなく霧谷も驚いて、ほぼ同時に声のしたほうへ視線を向ける。