愛恋のキス




「……そっか」

「久しぶりに来たなぁ。高校になって一度も来た覚えはないかも」

「こんな綺麗な景色、いつでも見たいって思うけどな」
「……んー、藍原ちゃんと見たいって思ったからここに来た」

「……え?」


 わざと平気なフリをして。
 いつも通りに接しようと心がけていたのに、霧谷は気持ちを揺らがせるようなことを言う。


「……前から気づいてんのに、怖かったんだよな」
「霧谷?なんか様子が変だよ」

「それも全部、藍原ちゃんのせいだな」
「私のせい?」


 軽い調子で話しているくせに、その瞳は景色から一切逸らそうとしない。

 頭に焼き付ける勢いで彼は景色を眺めていた。


「……でも、俺が弱いせいで藍原ちゃんを苦しませてる」


 そんなことないって、すぐに否定の言葉が出てこなかった。

 まるで肯定しているかのように、霧谷から視線を外して俯いてしまう。